
WINTER 2025 ONLINE
12月

B
ファイアンスの壺とドライフラワーのコンポジション
ジョルジョ・ルッケージ
Giorgio Lucchesi(1855-1941) イタリア
油彩 画布 左下署名 年記1889 113.5x54cm
イタリア・トスカーナ地方に中世とルネサンス期の余情を色濃くとどめた芸術の街ルッカがある。ジョルジョ・ルッケージは、生涯にわたり心の置きどころとしたルッカに生をうけ、そして自ら好んだ孤独のままに我が地で没した。
数少ない交友の中でも、同郷で同世代の芸術家「マノン・レスコー」や「蝶々夫人」などを作曲したイタリア・ロマン派オペラ界の代表的作曲家ジャコモ・プッチーニ(1858-1924)、自然の神秘に惹かれた詩人ジョバンニ・パスコリ(1855-1912)などとの接触はルッケージの作風の変化とも関連があるとされている。ルッカでの後半生において創作に関連し支えつづけたものの一つに「パラッツォ・プファンナー」があった。 この17世紀にバロック様式で構築された格式ある大規模邸宅は、内部のフレスコ画や趣味のよい調度、豪華な庭園を配置した名建築として古くから知られるところである。ルッケージはプファンナー邸宅内にスタジオを構えてここから離れることなく自適の画業を営みつづけた。魅力的で望ましい創作環境のもとでのスタジオ制作に変化があらわれるにはそう時間のかかることではなかった。 主題や画面構成など、これまで築きあげてきた画風が変化したというよりもむしろ画家自身の内面の変化であった。とくに静物画や植物画においては何気ない日常的な題材への強い執着を示している。描かれたすべての静物画や植物画に共通しているわけではないものの、選択された題材が画家の内面をとおして特異な静物画に変貌してゆくドラマがあり、描写するルッケージの息づかいが、どこまでも核心を吐き出そうとする意志として見えてくる。 こうして描かれた画面には、一見奇妙と思えるようなコクのある造形が出現して、プロセスの違いがあるとしても「シュルレアリスム」の手法を予期したものだ。
ルッケージは内省的なパーソナリティーながら作品の発表については国内外の展覧会やコンクールにおいて行動的に出展を重ねて画家としての地歩を築いた。はじめはルッカ美術アカデミーに学んだ後、1878年フィレンツェ展、1883年ローマ、1884年トリノ、1887年ヴェネツィア、国際展においてはミュンヘン、パリ、パレルモ、ミラノなどに出展した。また1897年と1899年のヴェネツィア・ビエンナーレには招待作家として出展した。
アカデミシャンとしては異才の画家であり、確信犯のようなところがある。本作のヴァージョンは数点あり、その1つは15年後の1904年に思い出したように制作された。たしかに繰り返され、描かれた作品には、高い完成度の1個の作品として思い入れを一筋にしたものが漂う。美術アカデミーで学んだアカデミシャンが特徴とする均一な描画技術や画面全体を統括する確かな諧調、正確な描写力などの点でルッケージは、しばしば気まぐれをおこした。しかし本作においては、画家の気まぐれは影をひそめ、意をこめた運筆が丁寧な画面の仕上がりを物語る。 画面を見れば、ドライフラワーやファイアンスの壺、巻貝、バロックスタイルのテーブルが精巧な写実と巧みな質感描写によって動きのある華やいだ絵画空間を作った。ここでは、神経がゆきとどいた滑らかな仕上げの絵具層がワニスのツヤを引き立てて画面の映りを深くしている。
本作は、19世紀イタリアのオリジナル「エンパイア様式・彫刻渡金木製額縁」により額装されている。
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